9月2日 長野県栄村

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◇長野県栄村の道直し作業が佳境にあるために、盆休み明けから当地に来ております。先週末も3時ごろから大雨が降り、作業が中断しました。昨日は薄曇で、力仕事には適切な天気ですが、現場に行っても職員は誰もおらず、「?」と言う感じでした。携帯電話は「圏外」表示の微弱電波しか届かず、所謂電波障害で使えません。30分ほど待っても埒が明かないので村役場まで下りてきました。道直しの現場は極野(にての)と言う、山岳地帯の村落の最後の集落にあります。藤原氏の流れを汲む25戸全戸が藤木の姓の誉れ高い集落です。Nepalも由緒あるIndiaからの位の高い僧侶等の落人が多く、隣のBhutanも隣Tibet(今は中国ですが)からの移民の国です。6‐7世紀の頃からのお話です。山岳の住民は逃げて逃げてと言った歴史でしょうか?追々この辺の歴史も紐解く必要がありそうです。

◇私もそれではと仕事場を基点として、林道や僅かばかりの国道を一回りし、道路補修状態や、道路事情を確認してきました。僅か50kmほどの道程でも2-3時間かかりました。道路は一車線が多く、時速30kmほどしか出せません。山林では熊、猪、狢(むじな)、狐等が出ると言うので、車の外に出て、ノンビリ景色の写真を撮る等ということもなく、緊張しておりました。勿論一般道路でのお話ではない、人の全く通らない林道でのお話です。一般国道、県道でもすれ違った車輌は数台でした。それも某宅急便の配送者と、電力会社の点検車輌でした。嘗て駐在した西アフリカの奥地のジャングル並です。

◇既に一ヶ月程通っている栄村役場ですが、これまで一度も村役場内で、行政官にヒアリングする機会がありませんでした。大雨の翌日のその日には、席におられた島田茂樹副村長にご挨拶し、「道直し」と「田直し」について御教示いただきました。「田直しのTさんと言われる臨時職員は九州まで油圧ショベルの技術指導に出かけています」と言うお話で、この村の「道直し」と「田直し」の臨時職員は伝説の技術者のようです。私が今勉強している「住民参加の協働道直し」現場の責任者はA.T.さん(50歳)ですが、建機を使った土木施工作業(掘削、運搬、排土、転圧等、どの仕事もこなします。)、大工仕事、面無しの施工計画、大ハンマーの使い方から草刈、道路パッチングと何でも手早く、しかも相当正確な仕事ぶりで、正に「伝説の職員」と言う印象を、最初の仕事ぶりを見たときから受けておりました。この様な人材を大切に使いこなしているのが当村の光る所です。

給料はそこそこの様ですが、「全幅の信頼を寄せて任せている」のが味噌の様です。当人は最初、生活出来ないほどの給料なのでお断りしたが、高橋村長から「生活出来ないと他の方からも言われていますので実情は理解しています。そこのところを何とか・・・」と言うようなお話があり、所謂「若干色をつける」と言うようなことで、除雪機械の臨時運転職員から始めたそうです。元々は大工さんでした。一人ひとりに人生の物語があり、これ等の話をポツリポツリお聞き出来るのは、当地住み込みで一緒に仕事をしている醍醐味です。私もODAの現場から、日本の僻地山村の紹介を続けるジャーナリストの世界の現場に鞍替えした様な心境でおります。

◇週末に帰京し又月曜日に当地に出向く生活で、8月一杯の予定でしたが雨で工期が遅れ、9月一杯掛かりそうです。今年はその様なわけで、道直しに血道をあげております。9月一杯で、本年度の予算内での当地の協働道普請の目鼻もつくと思います。その後は紅葉が始まり、どんよりとした空から間もなく雪が降ってくる季節を迎えます。

◇以上「住民参加型協働道普請・道直し事業」の経過報告です。住民参加型プロジェクトが今日の識者(?)間での開発課題の主流です。又ODA案件の主流ですが、長年その業界内にいて実態を語られている言葉ほどには分りませんでした。その様なことから開発途上国の「住民参加」案件の実態より、地元日本の住民参加を先ず実地に見て調査し、それから開発途上国の実態を学ぶ(本当にその様なものがあればの話ですが・・・)と言う手順で進めております。今回はその入り口の報告です。学者や研究者をはじめやジャーナリストは、知的な課題でさえ流行を追っかけるきらいがありますので、私のような技術屋はその逆を行きます。東アジアの今おかれている状況は、聖徳太子の毒殺(?)後の645年の「大化の改新」の頃と何が違うのか?と感じているだけに、上滑りしがちな報道界や、学会(?)とは若干距離を置いた見方を心がけております。

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